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金網フェンスのデザインをよく見てみると奥深かった

線路脇の金網フェンス
線路脇の金網
 ひとたび街を歩けば見かけない日ことはないというほどよく見かける,金網フェンス。
 日常の風景に溶け込みすぎて,もはや空気のような存在だけど,一見単純そうなモノだけに,あれこれ考えてみると意外な発見がいっぱいある。

金網フェンスは何のためにある?

 金網フェンスをどこで見かけるか。野球場,線路脇,マンション沿い,変電所周りなどなど,本当に色んなところでお目にかかる。
 金網フェンスの役割ってなんだろう?たとえば野球場なら,ボールの場外飛び出し防止。線路脇なら,人や動物,車,それにボールや風で飛んできたモノが侵入するのを防ぐ。マンションや変電所周りも,人の立ち入り禁止のためにあるものだろう。
 要するに「入っちゃダメ」という目的で設けられている。 

もしも金網フェンスの背が低かったり高かったりしたら?

 もしも線路脇の金網フェンスがたとえば,50cmくらいだったらどうだろう。多分,毎日のように小学生や中学生が(イケナイ大人も!?)線路に立ち入って,あちこちで電車が止まるだろう。そうじゃなくても,ちょっとボールとか飛んできたら簡単に線路上の障害物になるし,やっぱり簡単に電車が止まる。
 マンション脇の金網も,数十センチとかいう程度の高さだったらやっぱり,ちょっとしたワルは入っちゃおうかなという気になるんじゃないだろうか。文字通り,ハードルが低い。

 逆に,金網の背がめちゃくちゃ高かったらどうだろう。たとえば,線路脇の金網が,50mあるとか。まず率直に言って「ムダ」だということが誰でも直感できるんじゃないだろうか。そして,倒れてきたら,危ない。電車の上に倒れてきたりなんかしたら,本末"転倒"。何やってんだかわからない。もちろん,50mの高さでも倒れない金網というのは,頑張れば作れると思う。でも,それこそ「ムダ」。
 マンション沿いの金網を50mで建てたら,今度は別の問題が起こる。「景色悪くなったんですけどー」って,上の階の人たちからクレームの嵐。「1階に不審者が入んないようにすればいいんでしょ?なんで私たちまで巻き添えくらわなきゃいけないのよ!」って。

 そんなこんなで,あちこちで見かける金網は,「ちょうどイイ」高さに落ち着いているはず。

もしも金網の目が粗かったり細かかったりしたら?

 たとえば,金網の目,つまりワイヤーに囲まれて空いている隙間の部分の大きさが,1m×1mとかだったらどうだろう。
 線路脇の金網がこんなんだったら,さっきの話と同じで,毎日のように小学生や中学生が(イイ大人も!?)線路に立ち入って,あちこちで電車が止まるだろう。そうじゃなくても・・・(以下省略)。

 逆に,金網の目がこれでもかっていうくらい細かかったらどうだろう。手編みセーターくらいのイメージ。線路脇の金網でこれやられたら,全国の鉄道ファンや子供たちが泣く。そして,線路脇の道の圧迫感が増す。もしかしたら,線路脇に住む人たちにとってみたら,防音性はちょっと上がるかも?
 でも,線路脇で見かけるタイプの金網は,ワイヤー同士を撚ってつくってるわけなんで,多分,一部のワイヤーが切れたりしてダメになっても,その部分だけ取り替えれば済むようになってるんじゃないだろうか。そうだとすると,これでもかというくらい金網の目を細かくしてしまうと,取り替えが面倒くさくなる。

 そんなこんなで,金網の目の大きさも,「ちょうどイイ」大きさになっているはず。

もしも金網が細かったり太かったりしたら?

 もし,金網のワイヤーが髪の毛みたいに細かったらどうだろう。簡単に切れそう。でも,これはさっきの目の細かさにも関係する話で,もし髪の毛の太さでも,細か―く編んでたら,そんな簡単に切れることもなさそう。もし,元と同じ目の粗さでワイヤーだけ細くした場合は簡単に切れそうなだけじゃなく,金網が見えづらくなって,間違ってぶつかる人が増えそう。

 逆に,金網のワイヤーが指くらい太かったらどうだろう。それはそれは頑丈な金網ができそうだ。でも,指くらいの太さのワイヤーを元と同じくらいの間隔(ピッチ)で撚るのは難しいだろう。硬すぎて硬すぎて・・・。だから,多分ワイヤーを太くするとその分,撚りの間隔が広がっていく。つまり,目は粗くなっていく。
 それか,撚らないという選択肢も出てくるだろう。本当に太くてただただ頑丈な金網を作りたいと思ったら,太いワイヤー同士を格子状にして,お互いに溶接すれば済みそうな話だ。

 そんなこんなで,金網の太さを変えても成り立つのかもしれないけど,目の粗さとかつくり方とか,他のことに影響が出てきそうだ。

もしも金網じゃなくて〇〇網だったら?

 もしも金網じゃなくて,たとえばプラスチック網だったらどうだろう。金網と同じように,プラスチック線を撚ってお互いに絡ませてつくったようなものを想像してみる。太さは,元の金網と同じ直径1~2mm程度のもの。プラスチックといっても,種類は色々ある。釣り糸で使うナイロン糸やポリエステル糸だったら,金網と同じように撚ってみても,成り立つかもしれない。
 でも,もし何かのケースに使われてるような「カチッコチ」のプラスチックだと,撚れない。いや,撚れるのかもしれないけど,作った段階で撚った形にしておかないといけない。たとえば,使ってる途中で壊れたからといって現場で撚り直すのは難しい。
それとは別に,何の対策もしてないプラスチックが外で日光に晒されると,傷む。そうすると,衝撃に弱くなったりする。これじゃあ,「入っちゃダメ」の網に使うには心もとない。

 ガラスだったらどうか?見栄えはいいかもしれないけど,割れたら厄介。危ない。
 木はどうだろう。家庭の庭なんかでも木でできた格子状のちょっとオシャレなフェンスなんかもあるくらいだから,全く成り立たないわけではないと思う。でも,雨風に晒されたらダメになりそうだし,放火のリスクもある。割れたときの修理も大変そう。

 そんなこんなで,金網じゃない〇〇網でも成り立つのかもしれないけど,金網の場合には考えなくてもいい,他のことを色々考える必要が出てきそう。

もしも金網が透明だったら?

 金網が透明だったら,見た目はいいかもしれない。街中の電線と一緒で,金網も一部の人たちには見た目の問題で目の敵にされていることと思う。でも,金網が透明だったら(金属だったら透明にはならないけど),これまた間違ってぶつかってくる人とか動物がいて,安全の面で不都合が出てきそうだ。
 実際は,もし透明にしようと思ったら,ガラスとかアクリルとかを使うことになるのかもしれないけど,割れやすいとか,日光でダメになるとか,集光して火災の原因になるかも?とか,壊れた場合にどこを直せばいいのか見た目じゃわからないとか,色々課題が出てきそうだ。

 「だから透明な網じゃダメなんだ!」ということじゃなく,透明にするならするで,それはそれは考えなきゃいけないことが色々出てくるという話。

もしも網じゃなくて壁だったら?

 これは,もう似たような話が既に出てきた。網目を細かくする話に似ている。網目を究極に細かくしていったら,それはもう壁同然だ。
壁だったら,本来の目的の「入っちゃダメ」という点では,とてもいい働きをしてくれる。網目を細かくする場合と一緒で,線路脇に壁建てたら,全国の鉄道ファンや子供たちが泣く。そして,線路脇の道の圧迫感が増す。だいたい,工事がちょっと大変そう。費用も,金網に比べたら多分高そう。線路脇に住む人たちにとってみたら,防音性は上がるからいいかもしれないけど。

 費用とか工事が大変そうという問題を置いておくとすると,たとえば,壁作っておいて,適当にアクリル窓をつけるとかして,線路の様子を見られるようにすれば,全国の鉄道ファンや子供たちが泣かずに済むかもしれない。

まとめ

 以上考察してきたとおり,金網フェンスはなるべくして,あの姿形をしているのではないかと思われる。なんとなれば「目ざわりだなー・・・」とか思ってしまって申し訳ない。皆さんも今度金網フェンスに出くわしたときは,素通りしようとする足をちょっと止めてみて,そのデザインの深遠さに想いを馳せてみてはいかがだろうか。